続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

日田彦山線復旧の行方

 日田彦山線は平成29年7月の九州北部豪雨で被災し、添田~夜明間が不通となりバス代行が続いています。JR九州と沿線の福岡県、大分県とで復旧に向けた協議が始まっていますが、2年近く経っても方針が決まらず未着手のままです。同じタイミングで被災した久大線・日田~光岡間はほどなく復旧工事に着手し、昨年7月に復旧しています。

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添田行きで運転される日田彦山線の列車:日豊線・小倉~西小倉間 2019/5/1

 JR九州は日田彦山線のこの区間の輸送密度が低く赤字であることを理由に、地元に対し復旧費の負担に加えて年1億6000万円の財政支援を求めています。それに対し地元は復旧費の支援はするが、恒常的な財政支援には応じられないというスタンスで平行線が続いています。

 先月の統一地方選後に行われた「日田彦山線復旧会議」の中で、JR九州は鉄道で復旧する場合はやはり財政支援が必要なのと、地元に対し鉄道・一部BRT・バス転換の3案の復旧費・復旧後の費用負担を提示し、どの案が受け入れ可能か検討するよう申し入れました。 

 報道の内容をまとめてみると、3案の概要は以下のとおりです。運用コストと地元による財政支援は年額です。

  鉄道による復旧 一部BRTで復旧 全線バス転換
所要時間(添田~夜明間)  44分 49分 69分
復旧費用 56億円 10.8億円  1.8億円 
運用コスト(年) 2.9億円 1.1億円  1.4億円 
地元による財政支援(年) 1.6億円 なし  なし 

 こうやってファクターを並べて贔屓目なしに見ると、鉄道による復旧が非現実的で、一部BRTが一番いいように思います。日田も彦山も通らない日田彦山線なんて鉄ヲタとして残念ですが。

 福岡・大分の両県知事は鉄道での復旧を基本線としながらも、いったん持ち帰って沿線住民へヒアリングを行う意向を示しました。ここで安易に財政支援を決めてしまうと、他の赤字路線を抱える沿線自治体の悪しき先例になりかねないので、慎重に判断するんだと思います。よって、方針が決まるのはまだまだ先になりそうです。

 鉄道による復旧費用は改正鉄道軌道整備法を活用すればJR九州の負担は半分に(上下分離の場合は3分の1に)抑えられます。地元の財政支援1億6000万円の根拠ですが、不通前の平成28年度のこの区間の赤字が2億6600万円から運行経費を引いた地上設備の維持費とのことです。

 ただ、仮に鉄道で復旧させるにしても、地元が毎年固定で未来永劫1億6000万円負担し続けるのも現実的でないです。只見線のように地元で線路設備や土地を保有し、JRは運行に専念し、JRから支払われる線路使用料を地元からの財政支援で相殺する上下分離方式も一案ではないかと思います。


 さて、私はこの区間を5年前の9月に乗車していました。青春18きっぷの期間が終わった日曜日だったので、黒煙をもうもうと吐くボロボロの2両編成のディーゼルカーに、1ボックスに一人も埋まっていない状態でした。

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 たまに訪れて旅情と鉄道趣味を楽しむには最高ですが、現実問題として日常的にここを利用し必要としている人がどれくらいいるのだろうか?と当時から気になっていました。

 この頃は日田彦山線のテコ入れ策として小倉か門司港発着の観光特急を設定し、日田彦山線経由で由布院や別府まで走らせてはどうか?と思っていました。線路容量がカツカツの博多~鳥栖間を走らないで済みますし、本州方面から利用する場合だと、博多発着より小倉発着の方が距離や所要時間が短くて便利です。車両は直方の筑豊運輸センターに配置し、福北ゆたか線経由で小倉への送り込む際には通勤特急としても使えば小銭も稼げて一石二鳥です。

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右が日田彦山線:夜明駅 2014/9/14

 日田彦山線の田川後藤寺~夜明間の平成28年度の輸送密度(平均通過人員)は299人/日です。添田~夜明間だともっと少なくなります。JR北海道がバス転換の方針を示した基準が200人/日未満だったので、それに近い数字です。株式上場・完全民営化を盾に強硬に物事を進めようとするJR九州の姿勢はどうかと思いますが、何も支援なしに鉄道輸送を続けさせるのもまた酷な感じはします。どこかで両者が折り合えるといいんですが。

【補足:2019/8/6】

 地元の財政支援の根拠について内容を修正しました。